thee / thou / thyの意味と使い方

方言・古語

古い英語の二人称単数で、今のyouにあたる。thouが主格、theeが目的格、thyが所有格と役割が分かれている。当時は親しい相手に使う形で、youのほうが改まった言い方だったという点が今の語感と逆になっている。

どういう表現か

今の英語は、相手が一人でも何人でもyouですませる。古い英語には一人の相手を指す専用の形があり、しかも役割ごとに形が変わっていた。

はたらき古い形今の形
主語thouyou
目的語theeyou
所有(名詞が続く)thyyour
所有(名詞が続かない)thineyours
再帰thyselfyourself

I / me / my / mineとまったく同じ並び方をしている。一人称の形を思い浮かべて当てはめれば、役割は迷わない。

語感が今と逆になっている

現代の読者にとって、この形は荘重で古めかしく響く。祈りの言葉や賛美歌で見慣れているためで、おごそかな場面のための言葉のように感じられる。

当時の使い分けはその逆だった。

  • thou… 親しい相手・家族・子ども・目下
  • you… 改まった相手・目上・よく知らない相手

フランス語やドイツ語に今も残る使い分けと同じで、thou距離の近い側だった。やがてyouがすべての場面を飲み込み、残ったthouが古い文章の中でだけ生き延びた結果、古さがそのまま重々しさとして受け取られるようになった。

歌詞でこの形が出てきたら、厳粛さと親密さのどちらを狙っているのかを文脈で決めることになる。書き手が古語をどう理解しているかによって、狙いは変わる。

動詞の形も変わる

thouが主語のとき、動詞に-estが付く。よく出るものは形ごと覚えてしまうほうが早い。

今の形thouと組んだ形
you arethou art
you havethou hast
you dothou dost
you knowthou knowest
you shallthou shalt

arthastを見たら、主語はthouだと決めてよい。主語が省かれている行でも、動詞の形から補える。

thyとthineの使い分け

所有の形が二つあるのは、うしろに何が来るかで分かれるためである。

  • 名詞が続く → thy heart
  • 名詞が続かない → The choice is thine.

さらに、母音で始まる名詞の前ではthyでなくthineになる。thine eyesのようになるのは、aanの使い分けと同じ理屈で、音のつながりを整えているだけである。

どこで出てくるか

現代の文章で使う言葉ではないが、読む機会はいくつもある。

  • 賛美歌・祈りの文言
  • 十七世紀ごろまでの詩や戯曲
  • スコットランドやイングランド北部の古い歌
  • 古めかしさをわざと出したい歌詞

最後のものだけ性質が違う。書き手が意図して古い衣装を着せているので、語の並びが必ずしも当時の規則どおりとは限らない。thythineが入れ替わっているようなことも起こる。

訳すときに気をつけること

「汝」は反射的に選ばれやすいが、重すぎることが多いthouはもともと親しい相手への呼びかけなので、「汝」を当てると距離が開いてしまう。

  • 祈りや儀式めいた場面 → 「汝」「なんじ」でよい
  • 恋人・家族への呼びかけ → 「きみ」「おまえ」のほうが近い
  • 古さだけを出したい場面 → 文末を古語調にして、二人称は普通に訳す

古い形であることを、二人称の語だけで背負わせない。文体全体で受けたほうが、読みやすさと古さの両方が残る。

自作の例文

この節の例文はすべて書き下ろし。既存の曲から引いたものではない。

  • Thou art my friend.

    きみは私の友だ。

  • I give this to thee.

    これをきみに贈る。

  • Thy name is known here.

    きみの名はここでは知られている。

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