When I'm Gone / Eminemの歌詞和訳と意味

2005年のベスト盤『Curtain Call: The Hits』のために新しく書かれた曲。家族と仕事のどちらを取るかを主題にしていて、評価は割れた。題名のgoneは「死ぬ」とも「いなくなる」とも取れる形で、そこが訳の分かれ目になる。

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公式のミュージックビデオ。曲そのものはこちらで。

アーティストEminem
発表年2005
収録アルバム Curtain Call: The Hits

ここが分かると聴こえ方が変わる

I can't find Mommy, where is she?

ママがいないの、どこに行ったの?

When I'm Gone / Eminem / 作詞: Marshall Mathers, Luis Resto

話者が子どもに替わる行である。英語がそれを示す手がかりはMommyという語ひとつで、 MotherでもMomでもない選び方が幼さを出している。日本語は文末で人物を作れるので、訳文は「の」を2回置いて子どもの口調にしている。 英語は語彙で、日本語は文末で、同じことをしている。 動詞も入れ替わっている。原文のcan't find探したけれど見つからないという、子どもの側の動きを含む言い方だが、訳文の「いない」はママの側の状態を言う。主語が入れ替わっても、幼い声はむしろ強く出ている。

I keep havin' this dream

毎晩 俺は夢を見る

When I'm Gone / Eminem / 作詞: Marshall Mathers, Luis Resto

keep -ing繰り返しで、「し続ける」ではない。「夢を見続ける」と訳すと一度の夢が長く続いたようにも読めてしまう。訳文は「毎晩」と回数のほうへ寄せている。原文はどれくらいの頻度かを言っていないので、ここは訳の側が具体的な間隔を決めていることになる。英語のkeepは継続と反復を1語で担うが、 日本語は別の言い方に分かれるので、訳す側がどちらか決めざるを得ない。決めた時点で、原文には無かった細かさが訳文に入る。

ベスト盤のために新しく書かれた曲である

2005年12月6日、ベスト盤『Curtain Call: The Hits』と同じ日に、その先行シングルとして出た。曲そのものの記録はWikipediaの項目にある。

立ち位置が変わっている。ベスト盤は普通、すでに出た曲を集め直したものである。ところがこの盤には新しく書かれた曲が3曲入っていて、この曲はそのひとつにあたる。残りの2曲はFackと、Nate Dogg参加のShake Thatである。ボーナストラックとして、第43回グラミー賞でElton Johnと演奏したStanのライブ版も入っている。

つまりこの曲は、過去をまとめる盤のために書かれた新曲という位置にいる。振り返る枠組みの中で新しいことを言う、という難しい役をあてがわれている。

チャートはBillboard Hot 100で8位、Hot Rap Tracksで22位、イギリスで4位。1位になったのはオーストラリアのARIAシングルチャートだけである。

売れたことと、評価されたことは別である

この曲の批評は割れた。否定寄りの評も出ている。

記事にするときに気をつけるのはここで、チャートの順位を並べると「評価された曲」に見えてしまう。2つは別のことなので、分けて書くほうが正確になる。

同じ人の曲でもLose Yourselfは売れ方と評価がどちらも高い側に振れていて、この曲とは形が違う。同じアーティストの記事を並べるときほど、この差は書いておく価値がある。

題名のgoneは、どこまで訳すかで重さが変わる

gonegoの過去分詞である。日本語にすると単純に見えるが、幅が広い

  • その場からいなくなる
  • 家を空ける・出かけている
  • 死ぬ

英語はこの幅を選ばずに置けるWhen I'm goneと言ったとき、聞き手は状況からどれかを補うが、歌詞は補わせたまま進むことができる。

日本語はそうはいかない。「いなくなったら」と書けば軽く、「死んだら」と書けば重い。訳した瞬間に、原文が持っていた幅が消える。

この曲は家族と仕事のどちらを取るかを主題にしているので、どちらの意味に寄せるかで曲そのものの重さが変わる。訳し始める前に決めておくべき箇所である。

まとめの盤に置かれた新曲は、2つの役を同時に負っている

この曲の立ち位置は、記録として面白いだけではない。訳す側の前提を変える。

ベスト盤は、すでに知られている曲を並べ直す盤である。聴き手は過去を振り返る構えで盤を再生する。そこへまだ誰も知らない曲が置かれると、その曲は2つの前提を同時に背負うことになる。

  • 振り返る盤の一部として、それまでの曲を知っている聴き手に届く
  • 1曲の新曲として、それだけで独立して立つ必要がある

訳文はこの二重性を運びにくい。振り返りの側に寄せて訳せば、前提を知っている読者に向けた重い言葉になり、新曲として訳せば、盤の文脈が見えなくなる。

この記事は、立ち位置を記事の側で書くほうを採っている。訳文は1曲として自立させ、盤の中でどこに置かれているかは本文が引き受ける。訳文に背景を織り込もうとすると、行が説明を抱えて長くなり、歌としての速さが落ちるためである。

語りの相手が場面ごとに変わるので、口調を先に配ることになる

この曲は、語りかける相手が場面ごとに入れ替わる。話し手自身が別の人物の声を出す箇所もある。

英語がこの切り替えを示すのは、語彙と呼びかけの選び方である。Mommyのような語ひとつで話し手の年齢が変わるように、どの語を選ぶかで誰が喋っているかを見せる。文の形そのものは変えなくてよい。

日本語は文末のほうでそれをやる。語尾を変えれば話し手が替わったと分かるが、語尾は同時に丁寧さと感情の強さも決めてしまう。話し手を区別しようとして語尾を動かすと、意図していない温度差まで一緒に付いてくる。

そこで要るのが、訳し始める前の割り当てである。場面ごとに誰が喋るのかを先に一覧にして、それぞれに使う語尾の型を配ってしまう。行に当たってから考えると、同じ人物の口調が場面ごとにぶれる。

ここで語尾を動かしてよいのには、理由がある。原文の側に、話し手が替わったという印がすでにあるからである。語の選び方が幼さを見せているので、訳文の文末がそれを受けても、原文に無い情報を足したことにはならない。英語が語彙で持っている印を、日本語が文末へ移しているだけである。

印が無い曲では、同じことをしてはいけない。2人が歌っているのに原文が誰の言葉かを示していない場合、語尾で書き分けると原文が持っていなかった役割分担を訳文が作ることになる。その場合は行の切り方で処理する、という別の手を採る(All We Knowがその側の例にあたる)。

訳が割れるのは、goneの幅と語りの相手

  • goneをどこまで訳すか。上の節のとおり。曲の重さが決まる判断である
  • 語りの相手。上の節のとおり、場面ごとに語尾の型を先に配っておく
  • ラップの語数。1行あたりの語数が多く、日本語にすると音数が増える。Lose Yourselfと同じ問題が出る
  • 強い言葉の配分。1語ずつ訳語を決めるのではなく、曲全体で使う強さの総量を決めてから配る

語句解説

gone
goの過去分詞。いなくなるから死ぬまで幅がある。日本語は「いなくなる」と「死ぬ」がはっきり別の語なので、どちらかを選んだ時点で曲の重さが決まる。英語は選ばずに置けるところが違う。
ベスト盤(greatest hits)
すでに出した曲を集め直した盤。この盤には過去の曲だけでなく、新しく書かれた曲が3曲入っている。この曲もそのひとつで、まとめのために作られた新曲という珍しい立ち位置になる。
賛否が割れた曲
批評の評価が一致しなかった曲。この曲は音楽批評家から否定寄りの評も出ている。記事にするときは売れた評価されたを混ぜないほうがよい。

よくある質問

When I'm Goneはどんな曲ですか?

2005年12月6日に、ベスト盤『Curtain Call: The Hits』と同じ日に、その先行シングルとして出た曲です。ベスト盤のために新しく書かれた3曲のうちの1曲にあたります。

チャートではどうでしたか?

Billboard Hot 100で8位、Hot Rap Tracksで22位、イギリスのシングルチャートで4位、オーストラリアのARIAシングルチャートで1位です。1位になったのはオーストラリアだけでした。

評価はどうでしたか?

音楽批評家の評価は割れていて、否定寄りの評も出ています。売れたことと評価されたことは別なので、記事にするときは分けて書くほうが正確です。

題名はどういう意味ですか?

「自分がいなくなったら」です。goneは「いなくなる」から「死ぬ」まで幅のある語で、英語はどちらかを選ばずに置けます。日本語は2つがはっきり別の語なので、訳した時点で曲の重さが決まります。

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