Auld Lang Syne / Robert Burnsの歌詞和訳と意味
大晦日に世界中で歌われるスコットランドの歌。日本では「蛍の光」の旋律として知られているが、歌詞の中身は別物で、別れではなく旧友との再会を歌っている。題名がスコットランド語なので、英和辞書を引いても出てこない。
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演奏はChoral Scholars of University College Dublin。権利者の公式ミュージックビデオが無い曲なので、こちらで。
| アーティスト | Robert Burns |
|---|---|
| 発表年 | 1788 |
| 収録アルバム | Scots Musical Museum |
ここが分かると聴こえ方が変わる
auld lang syne
あの遠い日々
スコットランド語で、英語に直すとold long sinceにあたる。auldはold、syneはsince。つまり「遠い昔から」という時間の隔たりそのものを指す言い方で、日本語の「あの頃」に近い。辞書を引いても英語として出てこないのは、これがスコットランド語だから。題名が訳しにくいのはここに理由がある。
Should auld acquaintance be forgot
古い知り合いのことなど忘れてしまうべきなのか
shouldで始まる疑問形だが、これは「〜すべきか?」と本気で問うているのではなく、「まさか忘れたりしないよな」という反語に近い。答えを求めていない問いかけなので、素直に「〜すべきか」と訳すと説教くさくなる。英語の歌詞では、問いの形をとりながら答えが決まっている言い回しがよく出てくる。
shouldで始まる問いかけのうち、答えを求めていないもの。形は疑問文だが、話し手はすでに答えを決めていて、聞き手にもその答えを共有させるために問いの形を借りている。素直に「〜すべきか」と訳すと説教くさくなる。 反語のshouldをくわしく
スコットランドの古い歌に、バーンズが形を与えた
大晦日の夜に、腕を組んで輪になって歌う曲。年越しの映像で流れる、あの旋律である。
もとはスコットランドの歌で、いまの形に整えたのは詩人のRobert Burns。1788年に歌集『Scots Musical Museum』へ送ったことで広く残った。曲の来歴はWikipediaの項目にまとまっている。ただしバーンズ自身は、これを自分が一から書いたものだとは言っていない。古くから伝わっていた歌を、老人の歌唱から書き取ったのだと説明している。つまりこの曲は、作者がひとりで作った歌ではなく、すでにあった歌に彼が形を与えたもの、という位置にある。
年越しの定番になった土台は、スコットランドの大晦日の祝い「ホグマネイ」の習慣にある。そこからスコットランド系の移民を通じて英語圏へ広がり、いまでは出身地とほとんど関係なく歌われるようになった。
この記事だけ原文を並べられるのは、権利が消えているからである
このサイトの他の記事は、解説に必要な行だけを引いて、原文を並べることをしない。権利のある曲だからで、そこは方針として決めてある。
この曲だけ扱いが違う。バーンズは1796年に亡くなっている。保護期間は著作者の死後70年なので、原文の権利はとうに消えている。権利が無いものには、引用の要件そのものがかからない。
ただし消えているのは原文の側だけである。和訳は訳した人の著作物になるので、他人の訳を持ってくることはできない。ここに置いてある訳は自分で訳したものである。
「蛍の光」と同じ旋律だが、歌詞は別物
日本でこの旋律を最初に覚えるのは、たいてい「蛍の光」としてだろう。卒業式で歌い、閉店の時刻に流れるあの曲である。
ただし歌詞は原曲の訳ではない。1881年に発行された『小学唱歌集』で、この旋律に日本語の歌詞が新しく付けられたもので、蛍の光や雪明かりで書を読んだという中国の故事を下敷きにしている。原曲のほうに勉学の話は出てこないし、別れの歌でもない。
原曲が歌っているのは、その逆に近い。旧友と再会して、昔のことを語り合う場面である。「あの頃を忘れてしまっていいのか」と問いかけ、忘れないでいようと確かめ合う。日本語の歌詞が「これから別れる人へ向ける歌」なのに対して、原曲は「久しぶりに会えた人と交わす歌」で、時間の向きが逆になっている。
年越しに歌われるのも、この向きで読むと腑に落ちる。過ぎた年を送り出すというより、過ぎた年ごと抱えたまま次へ行く歌なのだ。
題名は英語ではなくスコットランド語である
この曲の題名は英語ではない。スコットランド語である。
スコットランド語は英語の方言ではなく、英語と同じ祖先から分かれた別の言語として扱われることが多い。つづりが英語によく似ているので英語のつもりで読めてしまうが、そのまま読むと意味の取れない語が混ざる。auldとsyneがまさにそれで、英和辞書を引いても出てこないのはこのためだ。
だから「Auld Lang Syne」を日本語の題名にしようとすると、必ずどこかが削れる。「遠い昔」と訳せば意味は通るが、この語がスコットランド語であるという手触りが消える。「蛍の光」と当てれば通りはよくなるが、中身の違う別の歌の名前になってしまう。訳さずにそのまま置くのが、いまのところ一番損の少ない扱いになっている。
訳が割れるのは、問いかけの形と旧友との距離
- 問いかけの形。この曲は問いの形で始まるが、答えを求めてはいない。「〜すべきなのか」と素直に訳すと説教くさくなるので、反語であることが伝わる日本語を探す必要がある
- 一人称と相手との距離。旧友どうしの歌なので、丁寧すぎると他人行儀になり、くだけすぎると年越しの厳粛さが消える。この曲は場面が先にあるぶん、訳文の口調が場面と噛み合っているかで良し悪しが決まる
- スコットランド語の語をどう見せるか。訳文の中に溶かしてしまうと、もとの語の異物感がなくなる。語句解説に逃がすか、訳文に残すかは方針の問題になる
語句解説
- auld lang syne
- スコットランド語で「遠い昔」。英語に直せばold long sinceにあたる。日本では「蛍の光」の旋律として知られるが、歌詞の内容は別物で、旧友との再会を歌っている。
- スコットランド語(Scots)
- 英語の方言ではなく、英語と同じ祖先から分かれた別の言語として扱われることが多い。つづりが英語に似ているぶん、英語のつもりで読むと意味が取れない語が混ざる。auld(old)やsyne(since)がその例。
- ホグマネイ(Hogmanay)
- スコットランドの大晦日の祝い。この曲が年越しの定番になった土台で、そこから英語圏全体、さらに世界へ広がった。
よくある質問
Auld Lang Syneはどういう意味ですか?
スコットランド語で「遠い昔」という意味です。英語に直すとold long sinceにあたり、「あの頃」「昔むかし」といった時間の隔たりそのものを指します。英語ではないので、英和辞書を引いても出てきません。
「蛍の光」と同じ曲ですか?
旋律は同じですが、歌詞はまったく別物です。「蛍の光」は1881年に発行された『小学唱歌集』でこの旋律に日本語の歌詞を付けたもので、原曲の訳ではありません。原曲は旧友と再会して昔を語る歌で、日本語の歌詞にある勉学や別れの主題は入っていません。
なぜ大晦日に歌われるのですか?
スコットランドの大晦日の祝い(ホグマネイ)で歌う習慣が土台にあります。「昔なじみを忘れずにいよう」という内容が年の変わり目と相性がよく、スコットランド系の移民を通じて英語圏へ広がり、いまでは年越しの定番として世界中で歌われています。
作ったのはRobert Burnsですか?
完全な創作ではありません。バーンズ自身が、古くから伝わる歌を老人の歌唱から書き取ったと説明しています。いま歌われている形に整えたのが彼で、1788年に歌集『Scots Musical Museum』へ送ったことで広く残りました。