The Nights / Aviciiの歌詞和訳と意味

2014年にAviciiのYouTubeチャンネルで先に公開され、その後EPに収められた曲。歌っているNicholas Furlongはクレジットに名前が出ていない。父から息子への言葉という枠組みを持つので、訳では語り手の年齢と口調を先に決めることになる。

この曲を聴く

歌詞の全文と全訳は、動画のほうで曲に合わせて流れる。通して味わうならこちらから。

アーティストAvicii
発表年2014
収録アルバム The Days / Nights(EP)

ここが分かると聴こえ方が変わる

Think of me if ever you're afraid

不安に駆られたら父さんのことを思い出せ

The Nights / Avicii / 作詞: Tim Bergling, Nicholas Furlong

原文はここを代名詞のまま置いている。父が息子へ言った言葉の引用なので、英語ではmeが誰かは手前のHe saidで決まる。訳文はそこを「父さん」と開いた。日本語では引用の中だけを取り出しても関係が見えるようにしないと、命令形の「思い出せ」が 誰から誰への言葉か決まらない。語り手どうしの関係を先に決めないと口調が選べない、という順序でこの判断が起きている。条件と主節の順も入れ替わっている。原文は「思い出せ」が先で条件が後、訳文は条件が先に来る。日本語は条件節を前に置くほうが素直に読めるためで、 行の意味は同じでも、聞こえてくる順序は変わっている

So live a life you will remember

記憶に残る人生を歩むんだ

The Nights / Avicii / 作詞: Tim Bergling, Nicholas Furlong

rememberの主語は原文では聞き手で、覚えているのは本人である。訳文の「記憶に残る」は、誰が覚えているのかを言っていない。この置き換えで行の重心が動く。原文は「後から自分で思い返せる人生を送れ」と、記憶する側を本人に置く。訳文は人生のほうを主語に近づけて、 記憶に残るという性質の話にしている。「あなたが覚えている人生」と直訳すると説明的になりすぎるので、主体を落として性質に寄せる、という判断が働いている。 liveを「歩む」にしているのも同じ方向で、live a lifeという英語では自然な同語反復を、日本語では動詞を変えて避けている。

YouTubeで先に出て、そのあとEPに入った

2014年11月17日、Aviciiの公式YouTubeチャンネルに音源として先に公開された。その後2014年12月1日にEP『The Days / Nights』へ収められ、2015年1月11日にイギリスで発売されている。曲そのものの記録はWikipediaの項目にある。

出方の順序が普通と逆である。先に配信の面へ置いて、後から盤の形にまとめている。2014年という時期を考えると、EDMがこの経路で広がっていた時代のやり方がそのまま出ている。

イギリスのシングルチャートで6位、ダンスチャートでは1位。イギリス版のアルバム『Stories』にも入っている。

2015年1月23日には、本人による自身のリミックスThe Nights(Avicii by Avicii)が出ている。

この時期のAviciiは、2011年のLevelsで広く知られ、2013年のアルバム『True』の先行曲Wake Me UpSpotifyで最も再生された曲になった直後にあたる。

歌っている人の名前が、クレジットに出ていない

この曲を歌っているのはNicholas Furlongである。ただし表記の上では名前が出ていない。正式なクレジットはAvicii単独になっている。

こういう形は珍しくないが、記事にするときには扱いを決めておく必要がある。「誰が歌っているか」と「誰の曲として売られているか」が食い違っているので、どちらを書くかで読者に伝わる情報が変わる。

このサイトでは、表記と実際を分けて書くことにしている。歌手名を1つだけ書いて済ませると、実際に声を出している人が記事から消えるからである。

語り手が誰なのかを決めないと、日本語にならない

この曲は年上の誰かが年下の誰かへ向けて話す枠組みを持っている。歌詞の中で語り手が自分の立場を名乗るので、訳すときにはその関係をどう日本語に置くかを最初に決めることになる。

英語は二人称がyouの1つしかないので、関係の近さを言葉遣いで示さずに済む。日本語は違う。呼びかけの語と語尾を選んだ時点で、年齢差・親しさ・敬意のあるなしが全部決まる。

つまりこの曲では、訳し始める前に人物の設定を決めてしまっていることになる。決めずに書き始めると、行ごとに口調がぶれる。

題名が複数形であることは、日本語では自動的に消える

題名は夜を複数形で置いている。英語の数えられる名詞は、単数か複数かを書かずに済ませることができない。どちらかを必ず選ぶことになるので、複数形にした時点で、一夜のことではなく積み重なった夜のことだと決まる。

日本語の名詞には、その区別を示す仕組みが無い。「夜」と書いたとき、それが一晩なのか何度もの夜なのかは、語そのものからは分からない。つまり英語が形で決めていたことが、訳した瞬間に未決に戻る

補う手はある。「夜という夜」「幾つもの夜」のように、数の多さを語彙の側で作ることはできる。ただし英語の側は、複数形にしたこと自体で何かを強調してはいない。数を示すのが義務だからそうなっているだけである。日本語で数をわざわざ書き足すと、義務で付いていた情報が、選んで付けた強調に変わる

これは題名だけの問題ではない。この曲は過ぎた時間を積み上げる語りをしているので、複数形をどう受けるかの方針は曲全体に効く。題名で複数を諦めるなら本文でも諦める、というように、どこかで一度決めて通すほうが訳文は揃う。

過去を語りながら未来を指す曲は、文末の向きが行ごとに変わる

この曲は、かつて言われた言葉を思い出しながら、これからどう生きるかを言う、という二重の時間を持っている。英語は引用の形を使ってこの二重性を素直に運べる。言われた言葉は過去で、その中身は聞き手の未来を向いている。

日本語で厄介になるのは、文末が時間の向きも一緒に背負っているためである。「〜と言った」で閉じれば過去の出来事の報告になり、「〜しろ」で閉じれば、いま目の前で言われた言葉のように立ち上がる。同じ行でも、閉じ方ひとつでどちらの時間に読者を置くかが変わる。

この曲の訳で決めることになるのは、その配分である。

  • 引用の枠を毎回明示する。関係は明確になるが、行が長くなり歌に乗らない
  • 枠を省いて言葉だけを置く。強く響くが、誰の言葉かが薄れる
  • 最初に一度だけ枠を示し、以降は言葉だけを置く

3つ目が歌詞では扱いやすい。枠は一度立てれば持続するので、読者は最初の数行で関係を把握したあと、言葉のほうに集中できる。

訳が割れるのは、語り手の口調と時間の向き

  • 語り手と聞き手の関係。年上から年下への語りなので、日本語では語尾と呼びかけで関係が確定する。先に決めてから訳す
  • 時間の向き。上の節のとおり、引用の枠をどこで立ててどこで省くかを決める
  • 繰り返しの扱い。同じ行が何度も返る作りなので、毎回同じ訳文を置くとくどくなり、変えると繰り返しであることが消える
  • 題名の複数形。同じく上の節のとおり、数を補うか諦めるかを一度決めて、本文まで通す

語句解説

uncredited vocals(クレジットされていない歌唱)
実際に歌っているのに、表記に名前が出ない形。契約や売り方の都合で起きる。この曲ではNicholas Furlongが歌っているが、正式な表記はAvicii単独になっている。誰が歌っているのかを記事で書くときは、表記実際を分けて書く必要がある。
EP
シングルより曲数が多く、アルバムより少ない盤。数曲だけをまとめて出すときに使う。この曲はThe Days / Nightsという2曲の対になったEPに入っている。
セルフリミックス
作った本人が自分の曲を作り直したもの。この曲ではThe Nights(Avicii by Avicii)がそれにあたる。原曲と並んで流通するので、どちらを聴いたかで印象が変わる。

よくある質問

The Nightsはどんな曲ですか?

2014年11月17日に、本人のYouTubeチャンネルで音源として先に公開された曲です。同年12月1日にEP『The Days / Nights』に収められ、2015年1月11日にイギリスで発売されました。

歌っているのは誰ですか?

Nicholas Furlongです。ただしクレジットには名前が出ていません。表記の上ではAvicii単独の曲になっています。

チャートではどうでしたか?

イギリスのシングルチャートで6位、イギリスのダンスチャートで1位です。イギリス版のアルバム『Stories』にも収録されています。

別の版がありますか?

あります。2015年1月23日に、本人による自身のリミックス『The Nights(Avicii by Avicii)』が出ています。

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