Perfect / Ed Sheeranの歌詞和訳と意味

本人の結婚相手について書かれたラブソング。ビヨンセ版とボチェッリ版があり、3つとも別の曲のように響く。題名のperfectは「完璧」と訳すと固くなる語で、この曲はそこがそのまま訳の難所になっている。

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公式のミュージックビデオ。曲そのものはこちらで。

アーティストEd Sheeran
発表年2017
収録アルバム ÷(Divide)

ここが分かると聴こえ方が変わる

I found a love for me

愛せる人が見つかった

Perfect / Ed Sheeran

loveaが付いている。英語ではlove数えられる名詞として使えるが、そのとき指すのは感情ではなくである。日本語の「愛」にこの使い方は無く、「一つの愛」と置くと感情の話に戻ってしまう。訳文が「人」と言い換えているのはそのためで、 原文にあるloveという語は訳文から消えている。この曲は同じ語を繰り返して効かせる作りなので、 語が消えると、その繰り返しの手触りも一緒に切れる。意味を通すか、反復を残すか。短い行ほど、この2つは同時に満たせなくなる。

I will not give you up this time

今度はきみを手放さない

Perfect / Ed Sheeran

give upを「諦める」と覚えていると、ここで意味がずれる。目的語が人のとき、この句はその人を手放す・引き渡すことを指す。「きみを諦めない」と訳すと自分の頑張りの話になってしまい、原文が言っている「離さない」とは別の内容になる。最初に覚えた訳語がそのままでは当てはまらない典型で、 句動詞は目的語で意味が変わるという例として読める。なおthis timeは、前に一度そうならなかったことを含んでいるが、その出来事自体はどこにも書かれていない。含みだけが置かれている。

小さなできごとを歌った曲が、クリスマスの1位になった

2017年のアルバム『÷(Divide)』の収録曲で、同年9月にシングルとして切られた。プロデュースは本人とWill Hicks。曲そのものの記録はWikipediaの項目にある。

本人はこの曲を、のちに結婚するCherry Seabornについて書いたと語っている。きっかけとして挙げているのは、James Bluntのイビサの家に滞在していたときの情景で、芝生の上を裸足で歩きながら、自分たちの好きな曲を聴いていたという言い方をしている。できごとの規模としては小さい。この曲の手触りは、その小ささから来ている。

チャートの上では大きくなった。イギリスではクリスマスを含む週の1位を取り、国内だけで100万枚を超えて売れている。

同じ曲が3つある

この曲がややこしいのは、世に出ている版が3つあって、どれも「Perfect」と呼ばれるところだ。

出た時期中身
Perfect2017年9月本人ひとり
Perfect Duet2017年12月ビヨンセとの2人版。アメリカのBillboard Hot 100で1位
Perfect Symphony2017年12月アンドレア・ボチェッリとの2人版。一部がイタリア語

日本語で「Perfectの和訳」を探している読者が、どの版を指しているかは決まっていない。歌われている言葉は同じでも、ボチェッリ版はイタリア語の行が入るので、訳す対象そのものが違う。

題名のperfectが、いちばん訳しにくい

英語のperfectを「完璧」と置くと、日本語では評価の語になる。点数をつけている響きが出て、相手を採点しているように読める。

ところが英語のperfectは、日常でもっと軽く、満足の表明として使われる。店員が注文を復唱してPerfect.と言うとき、その注文が完璧だと言っているのではない。「それでいい」「申し分ない」に近い。

だからこの曲のperfectも、相手に満点を付けている言葉ではなく、自分にとって過不足がないと言っている言葉として読むほうが近い。「完璧」と訳した瞬間に、曲がいちばん言いたいところが評価の言葉にすり替わる。

とはいえ、「申し分ない」では歌にならない。ここは訳語をひとつ選ぶ問題ではなく、曲全体をどの距離感で訳すかを決めてから、その距離に合う語を探す種類の難所になる。

訳が割れるのは、時制と「どの版を訳すか」

  • 相手への呼びかけの訳し分け。英語は二人称が1つしかないので、日本語にすると「きみ」「あなた」「おまえ」のどれを当てるかを訳者が決めることになる。この曲は結婚を歌っている曲なので、選んだ語がそのまま2人の関係の設定になってしまう
  • 時制。過去を振り返る行と、いまを言う行と、これからを言う行が混ざる。日本語は時制の印が弱いので、英語では自動的に付いていた時間の目印が訳文で消える
  • 版が3つあること。訳を作る前に、どの版を訳しているのかを決めて明示する必要がある。ここを書かないと、読者が自分の聴いている版と食い違ったまま読むことになる

語句解説

perfect
日本語の「完璧」より当たりがやわらかい。人やものについて言うとき、欠点がゼロだと主張しているのではなく、話し手にとって過不足がない、これ以上望むものがない、という満足の表明として使う。店員が注文を復唱してPerfect. と言うのも同じ用法で、注文が完璧だという意味ではない。
duet(デュエット)
2人で歌う形。この曲は本人ひとりの版が先にあり、あとから2人版が2つ出た。英語圏では既発曲に別の歌手を足して出し直すのが売り方として定着していて、Perfect Duetはその典型にあたる。
Christmas number one
イギリスで、クリスマスを含む週の全英シングルチャート1位を指す言い方。年に一度だけ順位そのものがニュースになる週で、狙って曲を出す歌手もいる。この曲は2017年のそれを取った。

よくある質問

Perfectはどんな曲ですか?

2017年のアルバム『÷(Divide)』に入っているラブソングです。同年9月にシングルとして出て、イギリスではクリスマス週の1位になりました。本人とWill Hicksの共同プロデュースです。

誰のことを歌った曲ですか?

本人が、のちに結婚するCherry Seabornについて書いたと語っています。曲ができたきっかけとして、James Bluntのイビサの家に滞在していたときの情景を挙げています。

ビヨンセが歌っている版があるのはなぜですか?

2017年12月にPerfect Duetとして2人版が出たためです。この版がアメリカのBillboard Hot 100で1位になりました。同じ月にはアンドレア・ボチェッリとのPerfect Symphonyも出ていて、こちらは一部がイタリア語で歌われます。

なぜ題名を「完璧」と訳さないのですか?

日本語の「完璧」は評価の語で、点数をつけている響きがあります。英語のperfectは満足の表明に寄っていて、相手を採点しているわけではありません。訳を固定すると、この曲がいちばん言いたいところが評価の言葉に変わってしまいます。

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